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快進撃を続ける「SAKURA GROUP」に、ベトナムでの成功の道を探る

僕は結局、ビジネスで勝とうとしたのではなく、戦わなくてもいいマーケットを探しただけなんです。

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対談ゲスト
SAKURA GROUP Chairperson
梁 秀徹(ヤン スチョル)様

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ベトナムで日本製品に特化した小売りと卸、ホテルを展開

山岸 今回は、ベトナムで事業を展開している「SAKURA GROUP」(さくらグループ)の梁さんにお話を伺っていきます。梁さんは私の大事な友人でもあります。まずは御社の事業の概要を教えていただけますか。

梁 弊社「SAKURA GROUP」の事業内容は、大きく2つあります。1つは、日本製品を100%扱う小売店と日本製品の卸業をベトナムで展開しています。

山岸 現在(2017年4月)、ジャパニーズショップは何店舗ですか?

梁 ハノイに直営店が8店舗、フランチャイズが5店舗あります。今年は直営店が新しく7店舗オープンする予定でして、フランチャイズもあと5店舗出します。
そしてもう1つの事業として、「SAKURA HOTEL」(さくらホテル)という日本人向けのビジネスホテルをハノイで3つ展開しています。

山岸 ホテルの立ち上げ時に、「思ったより大変だった」というようなエピソードはありましたか?

梁 1号店は3年目になるのですが、ベトナムでのホテル建築は正直、とても大変でした。
日本であれば建築会社に設計からお任せして、出てきたデザインを選んで作るというのが普通の流れだと思うのですが……デザインをいざ出してもらったら、客室の壁紙に富士山が書かれていたんですよ! それで「えーっ」と驚いて、それからは任せるわけにいかなくなってしまって。

山岸 日本の銭湯でも今は富士山は使わないでしょうね。

梁 結局、日本国内の大手ビジネスホテルにあちこち泊まって写真をたくさん撮って、「部屋はこういう形で、壁紙はこれを使って」などと、一つ一つ指定していきました。
日本の建設会社であれば全部考えてやってくれるところですが、ベトナムではビジネスホテルというものの標準がないため、机の高さから何から、全部自分たちで決めて作っていく感じでしたね。

山岸 私も実際、ベトナムに行った時に泊めていただきましたが、屋上に露天風呂があってユニークですよね。

梁 はい、1階に大浴場を作ろうと思っていたのですが、屋上で露天風呂にした方が湿気がこもらず眺めも良いということで。

山岸 なるほど。

人の好さに惚れ込んで、ベトナムへ進出

山岸 アジアには色んな国がありますが、なぜベトナムでの事業にチャレンジしようと思ったのですか?

梁 ベトナムはもちろん、インドネシア、マレーシア、タイ、韓国、香港、シンガポール……とアジアを色々と回って、「既に発展している国はやめよう」と思ったんです。
それで東南アジアが良いと思ったのですが、その頃ちょうどバリでテロがあって、イスラム系の国はリスクが高いかなと。タイもクーデターが多いですし。 一方、ベトナムは1党独裁で民族も88%がキン族(越人)なので、発展も早いだろうと思いました。通い出してみると、皆すごく人が好くて、これはいいなあと。その後は毎月1回、理由もなく行っていましたね。

山岸 現地の人たちの暮らしぶりを見たりして。

梁 そうですね。

山岸 ところでベトナムと言えばホーチミンとハノイが有名ですが、文化などに特徴はありますか?

梁 首都のハノイは政治の街で、ホーチミンは商業の街という感じですね。人口が多いのもホーチミン。
また、北部の人たちは貯金をして計画的にお金を使う人が多いですが、南部の人たちはその日のお金で飲み食いするというか、大金ではありませんが消費が多いです。気候も、南部は亜熱帯地方で年間を通して温暖ですが、北部は四季がある。そうした違いによっても文化が違っているようです。

山岸 なるほど、そういう面があるんですね。
ちなみに御社のスタッフは何人ですか?

梁 約300人です。男女比率は女性が約65~70%と男性より多く、比率が高いので女性の管理職も多いですよ。

山岸 なるほど。ちなみに小売りをはじめたきっかけは?

梁 卸は5年間続けてきましたが、5年前は3店舗だった卸先が今では100以上にまで増えました。そうするとどういうことが起きるかというと、段々と我々よりも卸先の方が強い立場になってくるんですね。

山岸 「安くしろ」とか?

梁 それもありますし、ほかにも「支払いを後にしろ」とか色々な要求が出てきて。そうなった時に、「それなら、我々が小売店をやろう」と。それで2014年に最初の直営店をオープンしました。
今後はネットワークを広げていくことに注力していこうと考えています。フランチャイズも含めてネットワークを広げないと、なかなか勝てないですよね。

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「SAKURA=日本の商品=信用できる」

山岸 ベトナムの人は、日本の商品に対してどんなイメージを持っているのでしょうか。

梁 驚くほど信頼度が高いですよ! 商品に対する優先順位は、1位が日本、2位がヨーロッパ。かつてフランスの統治下にあったためフランス人が多く、商品もフランスをはじめヨーロッパからたくさん入ってきます。その次が韓国の商品で、中国の商品の信頼度は一番低く、お金のない人がしぶしぶ買っているという感じです。

山岸 欲しくはないけれど、しょうがなく買うと。

梁 そうです。特に若者は韓国の安い化粧品をたくさん買っています。お金がある人には日本の化粧品がとても人気ですね。

山岸 近年はベトナムもGDPが上がってきていますから、高額商品を買える人がどんどん増えてきていますよね。

梁 はい。街並みにも豊かさが見えるようになってきました。
ベトナムは御存じの通りバイクが多いのですが、1台1000~1500ドルくらいはするんです。新卒の初任給が250ドルくらいですが、700ドルくらいするiPhoneとかも買ったりしていますし。

山岸 日本製の比較的高額な商品を買う人も増えているようですし、「日本の商品は質が良い」と言うイメージは今後のことを考えると非常にイイですね。

梁 はい。ですから弊社でも「日本以外の商品も店頭に置いて、商品数を増やそうか」という話が出たこともあるのですが、幹部から「SAKURA=日本の商品=信用できる、という構図を変えることになるので、それは絶対ダメ!」と。

山岸 なるほど。お店に行ったことがありますが、お客さんは女性が多いですよね。

梁 ほとんど女性で、20代後半から40代の方が多いですね。

山岸 ではやっぱり赤ちゃんとか、女性用の商品が人気なんですか。

梁 はい。一番人気は紙おむつと粉ミルクです。でも他店との価格競争が激しくて、ほとんど利益が出ないんですよ。これらを客寄せに使って、ほかに買ってもらう商品でどう利益を出すかが勝負ですね。

山岸 お菓子も結構置いていますよね。

梁 お菓子も売れていますね。当初は赤ちゃん用品しか売れませんでしたが、今は豊かになってきて、どんな商品が売れているかと問われれば全体的に売れています。
昔はあまり売れなかった女性用の商品、例えばストッキングなども売れるようになりましたよ。「子供だけじゃなく、自分にもお金をかけようかな」と意識が変化してきたのでしょうね。

山岸 よく聞きますよね、経済発展がするにつれて“美”にお金が動くようになると。

梁 そうですね。

口コミで商品が売れるのが魅力

山岸 御社とは去年(2016年)末から私が事業を手掛けている「COSMERIA」と連携させていただいてますが、やってみようと思ったきっかけは?

梁 やはりスキームですね、口コミサイトで物の情報を提供するという。
弊社の扱う商品はパッケージが日本語のままですし、現地のスタッフでは買えないような金額のものが多く、使ったことのない商品ばかりなんですよ。だから売るのが難しいんです。

山岸 確かに。

梁 でも、口コミサイトに寄せられた使用者のレポートを読めば商品を説明できて、売りやすくなる。それが魅力でした。

山岸 そうですね。人気の化粧品も出てきていますし、これからもっと盛り上がるという確かな手応えを感じています。日本の化粧品は、ベトナムではイケそうですよね!

梁 イケると思いますよ。「COSMERIA」さんの商品は、うちではまだ置かせてもらっているのが1店舗だけですけど、すぐにでも全店舗で置きたいくらいです。ただ、体制を整える必要があるので……。

山岸 はい。一歩一歩、確実に行きたいですね!
ちなみに、ベトナムでの事業展開は日本と勝手が違うところがあると思いますが、「これは大変だった」ということはありますか?

梁 いっぱいありますよ。今、ベトナムは短期間で急激に成長していっているので、システムの構築が間に合っていないんです。弊社だけでなく他の会社も成長しているために、システム会社自体が忙しくて対応しきれていない。
以前、ベトナムの会社に依頼して予約管理システムを作っていたのですが、やっぱり不具合が多いんですよ。それで、あれもこれもと指示を出して、「これではお金を払えない」というような険悪な状態になってしまったんです。そうしたらある日突然、クラウド上の管理画面にログインできなくなって、ホテルの予約状況が分からなくなってしまって。
仕方なくメールの予約確認票を1~2カ月分全部洗い出して、それは大変な思いをしました。

山岸 過去メールを調べて「この日からこの日は誰さんが予約している」と。

梁 そういった無駄な作業がいっぱいあるんですよ。日本みたいにシステム屋さんがたくさんいて、もっと言えば構築済みのシステムやレンタルのシステムを借りられたら、もっと早く成長できるんですけどね。

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「ベトナムで売れる商品」は、作れる!

梁 ベトナムの人はやっぱり、日本の化粧品でも、資生堂とかコーセーとか有名なブランドのものをもちろん欲しがっています。しかし、化粧品が売れる要素はブランドだけではない。ですから今からでも、「日本では知られていないけれどベトナムでは売れている商品」を作れる可能性は非常に高いわけです。

山岸 もちろんそうですよね。

梁 問題は、それをいつから仕掛けるか。当然、早ければ早いほうが良いですし、どれくらいのお金をかけてどれくらい辛抱して展開していくかということを、計画的にできる会社があれば、現地で有名なブランドになる可能性は高まるはずです。

山岸 海外に行くと、例えば韓国の化粧品なのに日本の化粧品のようなパッケージで売っているものがあったりしますよね。

梁 たくさんありますよ。中国には日本の100円ショップ「ダイソー」の真似をした「メイソー」というのがあって、商品も全部日本語で書いてあるんですが、全部チャイナとか安いところで作っていて、漢字も間違えていたり(笑)。

山岸 あー、ありますね。

梁 日本人が見たら偽物だと分かるんですけど、現地の人には分かりにくい。
ただ、偽物と知りつつ買っている人も多いですね。

山岸 とりあえず安いし?

梁 そうなんですよ。たいした商品はないのですけど、ハノイでも堂々と店舗展開をしています。でももっと裕福になれば、本物の方にいくと思います。

山岸 やっぱりそうですよね。

ビジネスはタイミングが大事

山岸 「自分もアジアに出たいけれど、何から始めればよいか分からない」という人たちに向けて、海外でやる時の秘訣や、アドバイスをいただけますか。

梁 正直、日本で成功したビジネスモデルと同じか近い形でやれば、成功する可能性は高いと思います。ただタイミングが合わないとダメなので、そのビジネスモデルが合うであろうタイミングを見計らっていくことが大切です。
例えば今、ベトナムでは結婚する人がすごく増えていて、私も数年前までは社員の結婚式には必ず行っていたのですが、今は多すぎて行かなくなりました(笑)。

山岸 そうなんですね(笑)。

梁 ベトナムでは昔は、新郎の田舎で路上にテーブルを並べて近所の人とお祝いをして、次の日に新婦の実家の近くで同じようにお祝いをする……というのが定番でした。
でも最近は街中のパーティー会場で披露宴をするのが増えてきた。つまり、ブライダルビジネスが参入するタイミングなのだと思います。

山岸 なるほど。

梁 でもほとんどの人が、ビジネスの可能性に気付いていても、失敗を恐れて動かなくなってしまう。私のとこにもいろんな人が視察に来ますけど、なかなか2度目は来ないですね。

山岸 観光してご飯を食べて、日本に帰っちゃうと(笑)。
実は私の知り合いで、ミャンマーやタイなどでwebの事業をしている人がいるんですが、同じような体験をしているそうなんです。「親身になってアドバイスをしても、結局なにも動かずアドバイスするのが嫌になった」と。

梁 その気持ち、本当に分かります。
また逆に、頼りきってくる人も出てきますね。例えば、「言葉が分からないから携帯電話の契約ができない」と、そこからお願いしてくる人とか。これはよっぽど親しい仲ならやりますけど、そこまでやっちゃうと全部面倒を見ることになっちゃいますからね。

山岸 そうですよね。

梁 そういう意味では、言葉が分からなくても、とにかく自分から行動していくことがとても大事ですよね。

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日本でビジネスをする方が不安

山岸 海外にチャレンジする時、不安があっても自分でなんとかしなければならないと思うのですが、梁さんはどうやって乗り越えましたか?

梁 それが、私の場合はまったく逆で、日本でビジネスをする方が不安だったんです。日本国内は競争が激しくて、ビジネスモデルの寿命も短くて、ビジネスを始めるための投資金額も大きい。そう考えると、本当に怖くて。
打てなくても大リーガーに入って頑張るのか、草野球チームで4番バッターとして活躍するのかの違いと言いますか。僕は結局、ビジネスで勝とうとしたのではなく、マーケットを探して参入しただけなので。

山岸 なるほど。言い方を変えると「戦っていない」と。

梁 戦っていないです(笑)。

山岸 戦わなくて良いところはどこか、常にアンテナを張っているんですね。

梁 そうです。

山岸 「COSMERIA」も、立ち上げた時から3~4言語でやっていますが、多言語の化粧品情報サイトってないんですよ。

梁 なるほど、そう言えばそうですね。

山岸 最初のうちは本当に、多言語でやっていけるか不安だったんです。管理がかなり面倒で。

梁 アジアって、言葉がけっこう違うんですよね。

山岸 そうなんです。

梁 でもそこにちゃんと対応できれば、逆にチャンスなんですよね。インドシナ半島とか、東南アジアも人口が多いので、やっぱりマーケットが大きいですし。英語だけでやってしまうと、なかなか広がりにくい。

山岸 うちのサイトでも、ベトナムの人が毎日100人以上会員になってくれているんですが、現地にサンプルを送ると質問が来る。でも社内にはベトナムの人がいないので、普通ならだいたいやらないんですよね。
ところがGoogle翻訳などを活用すると、この人は商品について言っているとか、配送について言っているとか、サポートの傾向が見えてくる。その後に安い翻訳サービスで翻訳して返したりすれば良いわけです。そうすると、もはや言葉は“本人のやる気”があれば何とでもなるものだと。梁さんもベトナム語できないですもんね。

梁 できないです(笑)

山岸 それってスゴイと思います。私は英語ができるので、アジアに行っても英語でなんとかできますけど、梁さんはベトナム語がまったくできないのにいきなりベトナムに行ったのですから。

梁 そう考えると、言葉はビジネスに関係なくはないけれど……。一歩踏み出してから後の事を考えたらいいかなって思っています。

山岸 なんとかなりますよね。

梁 なんとかするんですよ(笑)

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ベトナムに貢献しながら、2019年までに70店舗を実現

山岸 御社では毎年、ベトナムの病院でボランティアをされていますよね。

梁 はい。会社を立ち上げた当初から弊社のベトナム人の社長と約束をしているのが、「ベトナムで稼いだお金は、まず従業員・スタッフに還元し、ベトナム国内でそれを再投資すること。そしてベトナム国内の子供たちにお金を使うこと」。それで会社を創設して2年目から現地の病院でボランティアを始めまして、今では毎年の恒例行事になっています。

山岸 私も2回参加させていただきましたが、現地ではまだまだ十分な医療を受けられない人たちがたくさんいるんですよね……。8畳くらいの部屋に4~5人の患者さんがいるのを見て、非常にショックを受けました。

梁 1500床もあるマンモス病院で、たくさんの子供たちが少しの手術代を支払えずに困っているので、できるだけ助けてあげたいと思って始めましたが、もっと規模を広げていきたいと考えています。また今後は、相撲部屋の人を呼んで交流するなど、日本のものを見て喜んでもらえるような機会も作れたら理想なのですが。

山岸 素晴らしい!
これから「COSMERIA」と「SAKURA GROUP」さんで連携していって、今までにないような日本の化粧品の市場を一緒にベトナムで作っていけたらいいですね。

梁 そうですね! 本当にそう思います。

山岸 最後に、今後の御社のビジョンを教えていただけますか。

梁 店舗数で言うと、2019年までに70店舗を実現したいと思っています。そのためにシステムをどうするか、人の採用をどうするか、資金調達をどうするかという具体的な問題をクリアしていこうと考えています。

山岸 なるほど。ぜひ「COSMERIA」としても、1店舗から増やしていって、将来は「COSMERIA」の専門ショップを作っていきたいと思っています。

梁 そうなればスゴイですよね。シンガポールや香港など、ベトナム以外にも化粧品だけを扱っている専門店はあるんです。でもまだまだ少ないので、「COSMERIA」さんも行けると思いますよ。

山岸 はい、頑張ります。梁さん、今日は興味深いお話をたくさんお聞かせいただきありがとうございました。